ビーズワックス(蜜ろう)とは?


ビーズワックス(蜜ろう)とは?


ビーズワックス(蜜ろう)は、メスの働きバチによって作られる純度100%のワックスです。メスの働きバチが大量に蜂蜜を食べると、その糖分がお腹の下の「ろう腺」から「ろう」となって分泌されます。分泌されたばかりのろうはまるで魚のウロコのように、硬くて薄い形をしています。メスの働きバチは分泌されたばかりのろうをかき取り、口に入れて噛み、柔らかく練っていきます。こうして、ハチの唾液や多くの酵素がろうに混ざっていきます。分泌されたばかりのろうは無色ですが、雌の働きバチが噛んでいくうちに黄色や茶色に変わっていきます。色の濃さは、巣内にある花粉やプロポリスの量によって変わります。また、生成された場所により、成分も異なります。

ろうを生成するときには、巣内の温度がとても重要で、摂氏33~36C°に保たれていなければなりません。温度が低い場合には、メスの働きバチの周りを他のハチが取り囲み、巣内の温度を上げます。更に驚くべきことに、この蜜ろうを1g生成するためには、ウロコ状のろうが約1000個も必要とされます。とても忙しい人を「彼は働きバチのようだ」と言うことがありますが、なるほど、うなずけますね。

さて、ハチ達は巣の中で、この蜜ろうをどのように使っているのでしょうか。ハチ達は、この蜜ろうで六角形の筒が積み重なってできた「ハニカム(蜂の巣の内部)」を作っています。このハニカムには、食糧貯蔵庫や安全な産卵場所などの様々な用途があります。外敵から大切な食糧も卵も守れる、というわけです。

このハニカムは非常に正確な六角形の筒が並んでいます。この構造は、耐久性の高さが数学的に証明されています。さらに、最少量の蜜ろうで作ることのできる、とても効率の良い形状だそうです。

蜜ろうが溶ける温度は、生成の過程で混ざり合った物質の質や量によって変化します。しかしどんな蜜ろうも、低温下ではもろくなりやすいことがわかっています。





蜜ろうはハチミツとどう違うの?


さて、そもそもハチミツとはどんなものなのでしょうか。ハチミツは、働きバチが花蜜から作る、甘くてトロリとした金色の液体です。こちらも上の項と同様、「メス」の働きバチが作ります。女性総活躍ですね。Go ガールズ!

私たち人間が生活必需品としてさまざまな用途に使っているハチミツですが、もちろんハチ達にとっては重要な食糧源です。

ところが詳しく調べてみると、その仕組みはなかなか複雑です。

まず、メスの働きバチが、長いチューブ状の舌を使って、花蜜を集めてきます。そしてその花蜜を、体の中にある「貯蔵庫」と言われるところに保存します。この「貯蔵庫」は「honey stomach」とも呼ばれ、腹部にありますが消化器系とは別にある、「花蜜の貯蔵庫」なのです。この小さな「貯蔵庫」を満タンにするには、1000以上の花に止まって蜜を集めてくる必要があり、実に1時間以上もかかる作業です。そうやって「貯蔵庫」に花蜜が貯えられると、ハチのもつ酵素やタンパク質が加えられ、糖分の分解が始まり、同時に水分が増加します。




働きバチは体内の「貯蔵庫」が満タンの状態で巣に帰り、他の働きバチの「貯蔵庫」にその内容物をすべて吐き移します。その働きバチが、また次の働きバチへ・・・というように、この流れを何度も繰り返していきます。その過程で、花蜜が精製され、最終的に巣の「食糧貯蔵庫」である上述のハニカムに到達し、貯蔵されます。

この時点では、花蜜はまだサラサラとした液体で、私たち人間が家庭で使うトロっとしたハチミツとは程遠い質感のものです。そこで、ハチ達は巣内で羽を動かし、ハニカム内に風を吹かせ、水分を蒸発させます。するとハチミツの糖度が高まり、発酵や腐敗を防ぐことができるのです。

水分が蒸発し、ハチミツが適度な濃度になると、ハチ達は腹部から分泌される液体でハニカムの六角形の筒に蓋をしていきます。この分泌液が次第に固まることで蜜ろうとなり、密閉された状態のハチミツの食糧貯蔵庫が完成します。

実はハチミツは完全に密閉されていれば、半永久的に貯蔵可能です。なぜなら地球上の大半の細菌は、ハチミツの中では生きられないからです。特に花の咲かない冬の間、つまり花粉や花蜜の少ない時期には、ハチ達にとって重要な食糧源となります。

そんなハチミツですが、その色や味、香り、そして食感は様々です。それぞれの特徴は、どんな植物の花蜜をもとに、どのようにして作られたかによって、異なるのです。


さて、ハチは、ハチミツと蜜ろう以外に何を作っているのでしょうか。ハチが作り出す驚くべきものについては、こちらから。



 参考文献: